作品
血だらけのナイフを持って(黒玄前提救玄)
「貴方には殺せないよ。そのナイフをしまうといい」
「お黙りなさい」
「……あれが自分で死を選んだのは、この子のせいじゃない。
寧ろ貴方があれを見てあげられなかったからだ」
「いいえ。私は見ていました」
「見ていなかったさ。貴方がみていたのは『救世主』、そしてあの方、だ」
凍りつくような美貌の白の鳥。
手にした血塗れのナイフと相まって、ぞっとするほど綺麗だった。
俺を背に庇う黒鷹が、ごく僅かに震えている。
いつかの救世主とのやりとりが脳裏に浮かんだ。
――ねぇ、お前幸せ?
寂しそうな眼をした人間だと思った。
頷いた瞬間の苦笑いの表情が忘れられない。
――そ。……いいね。俺はお前になりたかったよ。
あれが会話を交わした最初で最後。
俺には黒鷹がいるけど、あいつにはきっと誰もいなかった。
少なくともあいつはそう思い込んでいた。
そうさせてしまったのは誰なのか、恐らく答えは直ぐに出るけど。
それでも、本当に見ていなかったのだとしたら、こんな風に俺たちに向かっては来ないだろう。
黒鷹の後ろから出て、逆に黒鷹を庇うように立った。
「玄冬。下がっていなさい」
「いい。……俺ならいいんだ、黒鷹。
どうせ直ぐに俺の傷は塞がるんだろう?」
傷つけるのが救世主でなければ。
「それで、あんたの気が本当に済むなら。……刺せばいい」
それが終焉を歩む世界と寂しい桜色の男へのせめての手向けになるのなら。
2006/?/? up
花々(閉鎖) が配布されていた「気狂い10題」、No8より。
……すみません、本当白側に救いがなくてすみませ……。(汗)
果たして黒玄前提救玄といっていいものだろうか。
- 2010/01/01 (金) 00:01
- 黒玄前提他カプ