作品
死体愛好家の主張(黒玄前提救鷹)
「ねぇ……アンタ、死体愛好家ってヤツ?」
「違うよ」
不審な眼差しを向けた赤い瞳に思わず笑う。
「だって、気持ち悪くない? 動いてないものにキスするなんて」
「生きていても、生きていなくても、玄冬は玄冬だからね」
温もりの失せた身体は二度と瞳を開かない。
何をしても反応が返らないのは確かに哀しいけれど、それでも愛しい子。
「……玄冬じゃないよ」
「うん?」
「それはただの抜け殻だ。アンタの玄冬はもう何処にもいない」
拗ねたような物言いが可笑しい。
玄冬の身体を抱えたまま笑うと、ますます彼は不機嫌そうになる。
「何がおかしいの」
「……いや、すまない。若いなぁと思ってね」
「どうせ、俺はガキだよ。……アンタに何時まで経っても追いつかない」
「微笑ましいと言っているんだよ」
魂が今ここに無くても、これは確かにあの子だった。
別に死体を愛でるわけじゃない。
私は玄冬を愛でている。それだけだよ。
不貞腐れた表情のままの彼を横目で眺め、もう一度腕の中の玄冬にキスをした。
2005/04/15 up
Abandonで配布されている「死に関する10のお題」より。
これは拗ねる救世主が書いてて楽しかった。
- 2010/01/01 (金) 00:03
- 黒玄前提他カプ
タグ:[黒玄前提他カプ][黒玄前提救鷹][黒鷹][救世主][春告げの鳥][ダーク系][死に関する10のお題][黒鷹視点]