作品
白い…
「冷えてきたと思ったら」
夜更け過ぎに寒気がして、目が覚めて。
窓の外を見ると雪が降り始めていた。
今年の初雪。
もうそんな季節だったか。
――黒鷹! こっちこっち!
――ああ、待ちなさい。そんなに慌てると転……わっ!
――あ……あははっ! 黒鷹が雪まみれ……ってあっ冷たっ!
――君も雪まみれになるといい! ほら、よけないとどんどん真っ白になるよ?
――ずるい! よーし……えいっ!
――おっとやったね? 手加減はしないよ!
まだあの子に『玄冬』であることを告げてなかったあの頃。
無邪気に笑って、二人で雪の中駆けて遊んだ。
今はもう舞い散る雪に笑ってはくれない。
白い冷たいものには顔を曇らせるだけだ。
あれ以来、玄冬は冬の間はいつも沈んでしまっている。
今、雪が降っているのはあの子の所為などではないというのに。
「……失敗したかね」
言わなければあんな顔をさせることはなかっただろうか。
いや、早かれ遅かれ告げなければならなかったことだ。
「あの子は朝これを見たら哀しい顔をするかな」
そうしたら、笑ってくれるまで抱きしめていればいい。
いっそ、今すぐにでも寒くて眠れなくなったと、玄冬のベッドにもぐりこみにでもいこうか。
しょうがないやつだと苦笑の1つでも零してくれたら。
少しは気も紛れるだろう。
2005/07/29 up
昔、ここで配布していた「玄冬好きさんへの10のお題」からNo1。
相手には気取らせないように玄冬を気遣う鷹を書くのが好きです。
- 2013/09/09 (月) 19:18
- 黒玄