作品
手慰みに
最初のきっかけは長い時間の退屈つぶしだった。
箱庭に在る、あらゆるものを対象にして、私は色々とキャンバスに描いていった。
ある時は空を。
ある時は芽吹く緑を。
ある時は無機物を。
ただ、『人』に興味はなく、『人』を描いた事はなかった。
玄冬がまた生まれてくるまでは。
「……またか?」
「いいじゃないか、描きたいんだよ」
描きたいと思ったことのなかった『人』。
玄冬がどんどん成長していくにつれ、それを形に残してみたくなって、次々とあの子を描いた。
***
「……この時は変な服を着させるな、といいながらも
今回だけだと着てくれたんだっけね」
かつて描いた絵を眺め、当時の様子を思い出す。
今はこの世界に居ないあの子を懐かしんで。
以前はあの子のいない時間に色々と描いていたのに、今は絵筆を取らない。
いつの間にか玄冬以外を描くことがなくなっていたから。
取るのは、またあの子が生まれてきた時だ。
ねぇ、次の君はどんな表情を見せてくれるんだい?
また君を描く日が楽しみだよ。
2005/06/15 up
昔、ここで配布していた「黒鷹好きさんへの10のお題」からNo6。
『げいじゅつ3』の黒鷹にどこまで玄冬を描けるだろうかという気もしないでもないですがw(酷)
- 2013/09/09 (月) 19:10
- 黒玄