作品
血の臭いが離れない(黒玄前提救鷹)
「貴方、血の臭いがする」
かり、と私の耳に歯を立てながら、救世主が囁きを落とす。
「そうかい?」
「うん、いや、血の臭いっていうか……死臭、かな。
……ねぇ、今まで何回玄冬の遺体を抱きしめたの?」
「さぁね、忘れたな」
あの子が逝く度に私はあの子を抱き締め、あの子の好きだった花の下に埋める。
死んだ後は、誰に触れさせたことも無い。
「そう。……妬けるな」
「……今の話の流れのどこでそうなったんだね?」
胸元に伸びた手に声が震えないよう、抑えるのは少し努力を要した。
「だって、そうやってあの子はいつも貴方に自分の気配を残していくってことでしょう?
まるで誰も踏み込むなっていってるみたいじゃない」
マーキングみたいだよね、と笑う気配がした。
悪くない。それは繋がりの証になる。
離れない血の臭いは、あの子が確かに存在していた証拠。
首筋に触れた唇の感触をよそに、脳裏に浮かんだのは玄冬の微笑んだ顔だった。
私は君のもの、君は私のものだよ、玄冬。
互いが何処にいようと、どんな状態だろうとね。
2005/05/31 up
花々(閉鎖) が配布されていた「あっけない死10題」から、No2。
相変わらず救世主そっちのけ状態な黒玄前提救鷹。
- 2013/09/09 (月) 19:23
- 黒玄前提他カプ