作品
サクラ、サクラ~Ver.Y
「桜の木の下には屍体が埋まっている……という物語がある」
「ああ、お前の部屋の本にあったな。あれなら読んだ」
「君は本当だと思うかね?」
「……血を吸い上げて、あんな風な花びらの色になるというあれがか?」
「悪くないじゃないか。まるで、人が桜に生まれ変わるみたいで」
「なるほどな。生まれ変わり、か。そう考えると……いいかも知れない」
「……玄冬?」
「黒鷹。俺が……」
その後に続いた言葉に、そんな縁起でもないことを言わないでくれたまえ、と。
話題を打ち切ったけれど。
覚えているよ。君の言葉だから。
忘れられるわけもない。
あまり自分の望みを言わない、君の願いをどうして無下に出来るだろうか?
命の灯火が消え、冷えた身体を抱いて。
僅かに微笑んだ口元にキスを落とした。
「埋めてあげるよ。……君の望みどおりにね」
君の好きな、あの花の下に。
そうして、季節が巡り、春が来て。
桜が咲き、散り逝く花びらに包まれ、君に抱きしめられる夢を見ながら想いを募らせよう。
再会の時を。
次の君が産声を上げる瞬間を。
2004/12/23 up
かつて別HNで立ち上げていた超短文黒玄サイト閉鎖後に裏サイトでこそりと元来の文章にして書いたもの。
別HNバージョンで書いたのはこちら。
- 2013/09/12 (木) 01:22
- 黒玄