作品
もう黙って
[Kurotaka's Side]
「もし……も……っ」
「うん?」
組み伏せた腕の下で玄冬が呼吸を途切れさせながら呟く。
「滅びの時が……来た…………っあ!」
「……こんな時に無粋だね」
大方、最近雪の降る日が多いことから想像したのだろうが、何も抱き合っている時にそんな話題を出すこともないだろうに。
深い場所を突き上げて、続けようとした言葉を遮る。
「いつ来るかわからない時のことなんて考えるんじゃないよ」
「ふ……っ!」
忘れていたまえよ。
こんな時くらい、滅びのことなぞ。
「もう黙っていなさい」
今、君が為すべき事は私の与える快楽に身を委ねる。
それだけでいいのだから。
[Kuroto's Side]
雪が降る。
まだ滅びではない、ただ冬を告げるだけの雪。
でも、これは。
いつ滅びの雪に変わるだろうか?
考えずにやり過ごせたなら、どんなにか。
「もし……も……っ」
「うん?」
「滅びの時が……来た…………っあ!」
唐突に深く中を抉られて、言葉が続かない。
見上げた黄金の瞳は、闇の中で怒りに近い色を浮かべている。
「……こんな時に無粋だね」
悲しみさえ篭めた声で落とされた呟き。
ああ、そうか。
滅びの時が来るのを恐れているのは俺だけではないんだな。
この腕から離れることに怯えているのは。
「いつ来るかわからない時のことなんて考えるんじゃないよ」
「ふ……っ!」
深い口付けは息が出来ないほど強く。
麻痺し始めた思考の奥に黒鷹の声が届いた。
「もう黙っていなさい」
傷ついたような声音に心の中だけで謝り、ただ黒鷹の背に縋りついた。
せめて一瞬。あの全てを忘れられるほどの強い快感を求めて。
2005/04/06 up
一日一黒玄でやっていたもの&Web拍手から。
恋をした2人のためのお題 -10 for lovers-(閉鎖)が配布されていたnoir 4より。(黒鷹視点)
2005年~2006年1月下旬までWeb拍手で出していたもの。(玄冬視点)
具体的な描写(何の)してないので表で。
- 2013/09/13 (金) 01:14
- 黒玄