作品
緑の攻防
「黒鷹、夕食出来たぞ」
「ん、今行くよ。……これはまた」
食卓に並んだ献立をみて、つい溜息が出る。
野菜の存分に入ったクリームシチュー、
さらにパンはハーブ入り。
これがビーフシチューなどだったら、どれほど良かったか。
「言っておくがな。
俺は何も野菜だけを食えって言ってるわけじゃないんだ。
肉も食っていいから、野菜も食えと言ってるだけだぞ?
そんな悲壮な表情をすることはないだろう」
「だって、君クリームシチューだと、あまり肉を入れてくれないじゃないか」
実際、シチューから覗いてるのはブロッコリーや人参、じゃがいもばかりだ。
腸詰肉が見えなくも無いが、あまり期待できる量が入っていなさそうだ。
「それはお前の主観だ。バランス的には丁度いい量を入れてある」
「それこそ君の主観だろう。私のバランスとしては丁度良くはない」
思わず席を立ち上がりかけたところで、玄冬が私の顔を見もせずに言い放つ。
極めて冷酷に。
「これを食わないなら、一ヵ月は一緒に寝ない」
「なっ! 何だいそれは!
それとこれとはまったく関係のないことじゃないか!」
「食うのか? 食わないのか?」
「く……っ」
再び席について、シチューを軽くスプーンでかき混ぜてから口に運ぶ。
正体不明の緑のものが入っていないだけまし、か。
「……覚えておきたまえよ」
玄冬に聞こえないよう、小さく小さく。
口の中で呟いた。
交換条件は高いよ? 君。
2005/10/06 up
一日一黒玄でやっていたものから。
花帰葬+Pで10のお題配布所(閉鎖)が配布されていた花帰葬+Pで10のお題よりNo1。
似たような展開に覚えあるなぁと思ったら、惚れたものの負けでしたw
似てたので、これはJunkに。
- 2013/09/13 (金) 20:48
- 黒玄