作品
手作り
果実酒を作り始めたのは、何時からだっただろうか。
確か、黒鷹と身体を重ねるようになってから少し経ったぐらいに思う。
「何を飲んでいるんだ?」
「ん? ああ、目が覚めたかい。木苺酒をちょっとね」
「……また新しい酒買って来たのか、お前」
「あはは、まぁ固いことは言わないでくれたまえ。酒は人生の潤いだよ」
そうあいつは言ったが、しょっちゅう新しい酒を買って晩酌しているらしいというのも、一緒に寝るようになって気がついた。
それならまだ作った方がましだろうと作り始めて今日に至る。
最初は、経済的な面で考えてのことだったが、何時からか黒鷹の喜ぶ顔が見られるから、と目的が少し変わった。
「ん、美味しい! 玄冬は何を作らせても上手だね」
俺自身は酒に酔わないけど、黒鷹が嬉しそうに飲むのを見ると、俺も嬉しくて。
つい色んな種類を作ってしまう。
時折出来上がったそばから、何時の間にか空けられてる瓶を見ると苦笑してしまうけど。
「お前、また新しく出来たのに手をつけたな」
「仕方ないじゃないか。美味しく作る君が悪い」
その言葉が嬉しい時点で、結局俺の負けだ。
果実酒の手作りは止められない。
2005/06/05 up
「amourette@718」(お題配布終了)で配布されていた
「食に関する10のお題」よりNo2を使って書いた話。
果実酒は公式いわく『玄冬が趣味で漬けたもの』だそうですが、酒の認識が水と変わらないと言ってしまう玄冬のことなので、やはり漬け始めた動機は黒鷹以外にあるまい!(笑)
この設定は黒玄的に非常に美味しかったので、アンソロジー寄稿分でも書きました。
(食前酒で乾杯を&黒親子宅の飲酒事情)
- 2013/09/15 (日) 00:07
- 黒玄