作品
もうろうとする意識の中で流れるはずの無い涙が落ちた
わかっているのに。
俺が願ったことなのに。
殺し続けてくれと言ったのに。
諦めでも悲観でもなく、また黒鷹が育ててくれるなら。
愛してくれるなら、何度繰り返してもいいと思っていたのに。
いつだって無条件に愛してくれるだろうと疑ってもいなかった。
「……うんざりだよ」
「いつまでこんなことを続ければいい?」
「死なせるために育てたいわけじゃない」
あれは違う。
黒鷹の声であるはずがない。
そんなはずないと思いたいのに、本能が黒鷹の声だと、本心だと告げている。
いい加減にしろと、いつまで甘え続けるのだと。
もう、この腕を伸ばしてはいけないのだろう。
次に生まれた俺を抱いてはくれないのだと思うと、無性に悲しかった。
……嫌だ。
お前がいてくれるから、何度繰り返してもいいと思っていたのに。
なのに、もうそれを言葉に出来るほどの力が俺には残っていない。
今にも泣き出しそうな黒鷹の顔を視界の隅で見ながら、俺も泣いていた。
どうして、こんな、こと、に……。
2005/10/25 up
一日一黒玄から。
花々(閉鎖) が配布されていた「諦めにも似た10題」、No10。
長い年月の中で何かが行き違ってしまった黒親子の図。
根が黒玄に染まってるので、二人が完全に仲違いになってしまうような話は中々書けません。
- 2013/09/17 (火) 05:51
- 黒玄