作品
深淵
美しいと思う。
吸い込まれそうな空の青。
安らぐ薫りと共にある茂る木々の緑。
力強く優しく全てを受け止める土の茶。
……白だって嫌いじゃない。だけど。
その色彩を全て埋め尽くして、世界を滅びに向かわせる雪。
儚げでいて、冷酷に命を奪うものだとさえ思わなければ、美しいと思えたかもしれないけれど。
雪は滅びを招くもの。
降らせているのは俺の存在。
悲しいと思う。
俺がいるから、この世界は、この世界で生きている命は滅びてしまうのだということが。
***
醜いと思う。
何も真実を知らずに、ただ上辺の言の葉を信じこんで愛しい子を殺せと告げる、この世界が。
この世界の人の心が。
知らないくせに。
お前たちが殺せという相手がどれほど世界を想っているのかを。
……だから、思う。
汚れのない雪に埋められてしまえばいい、と。
そうすれば、せめて最後くらい美しく在れるだろうに。
君は否定するだろうけどね。
本当は君の存在こそが、この世界の『救い』なのだよ。
だけど。
……君は嘆くのだろう。自分の存在を。
世界を滅びに向かわせることを。
哀しいよ。
自分を顧みずにそんな風に世界を思う君が。
哀しくて、愛しい。
***
悲しい。
哀しい。
滅ぼしたくない。
滅びてしまえばいい。
降り始めた雪に寄せる想いは底知れない。
2004/10/13 up
雪花亭で配布されている
「花帰葬好きさんに22のお題」よりNo6。
散文。玉砕気味orz
- 2013/09/27 (金) 00:24
- 黒玄