作品
愛はバリバリと音を立ててこの身を喰らう
――俺には出来ない……。
言いそうな気がしていた。寧ろ期待さえしていた。
――……玄冬。君は、あの子供を救いたいのだろう?
――だが、お前を消す事だって出来ない!
その言葉に内心笑いを隠せない。
ほら、ちびっこ。
この子が選ぶのは私なんだよ。
お前が敵うわけがない。
築き上げてきた絆は強固だ。
……だけどね。
私の元を一度離れ、思い出の数々を忘れたりなんてしてくれた罪は重いよ? 玄冬。
赦しなどしない。
私ではない者の手を取ったことを。
――……仕方無いね。
ぷつり、と紐を千切る。
大きく見開いた玄冬の目を私は忘れない。
これで私は君の記憶からは二度と消えないだろう。
優しい子だから、自分が私を死に追いやったと責めるだろう。
そうして、私は君の中に残る。
君の記憶を残酷な形で喰らう。
これは復讐だよ。
君が私から離れようとしたから。
私の事を忘れたりなんてするから。
そんないけない子にはお仕置きをしなくてはね。
二人で築いた世界を壊した君。
……精々苦しんで生きるといいよ。
そうして、再び会えた時にはちゃんと赦してあげるから。
2005/05/27 up
元は一日一黒玄で書いたもの。
Kfir(閉鎖) が配布されていた「猟奇的な恋で5題」、No3。
愛が憎しみに変わってしまった、根性悪い鬼畜な鷹。
深く呪いを刻みつけるという意図による、うちでは非常に珍しいパターン。
- 2013/09/30 (月) 01:30
- 黒玄