作品
君のせいで私は狂った
「いけない子だね」
あの子が部屋にいない。
自分で部屋を出る術を持つはずのないあの子が。
「どこに隠れているんだい?」
そうだとしたら、答えは一つ。
あの子は私を驚かそうと隠れているのだ。
「ほら、出ておいで。お菓子を持ってきたよ」
「……黒鷹」
私を呼んだ声はあの子のではない。
振り向くとそこにいたのは、何処か哀れむような目をした白い翼の片翼。
「ああ、貴方か。玄冬を知らないかい?
ここからいなくなるはずはないのだが」
「……落ち着いてください。あれはもういません」
「いない?」
「…………昨夜、時が来て……」
「嘘だよ。まだその時は来ていない」
――助けて……!
脳裏に浮かんだ声は一体誰の?
――助けて、黒鷹……! 黒鷹……!
私を呼んだのは誰だった?
差し出された手を掴めなかったのは?
……ああ、そうか。
これは夢だ。悪い夢。
「黒鷹……」
「玄冬……どこだい?」
今度はちゃんと手を掴んであげるから。
呼んでくれたら応えてあげるから。
早く、早く。
出ておいで……?
2005/07/29 up
元は一日一黒玄で書いていた分。
烈華(閉鎖)が配布されていた「7つの暗い言の葉 Part2」から。
原題は「お前のせいで僕は狂った」
壊れた黒鷹視点なので、色々説明不足になってますが、元来(自分で殺され続けることを選んだはずの)玄冬が最期の瞬間に黒鷹に助けを求めたことで、「あれは玄冬ではない」と黒鷹の中で結論づいてしまって、おかしくなってしまった、という話。
- 2013/10/02 (水) 01:25
- 黒玄