作品
てのひらの先に
もうどれほどの時が経っただろうか。
私達があの箱庭を出て、時の輪から外れ、二人きりになってから。
時折、箱庭を眺め、何かを語り合い、睦み合うばかりの永遠の時間。
どこまでも、いつまでも続いて行くそれに、時折君は済まなさそうな顔をするけれど。
俺の我侭でなったことだと。
……君がそう思う必要はないのだけどね。
本当に我侭なのは私の方なのだから。
世界の滅びが止まる、他の方法を君に言えずに二人でいることを選んだのは私。
君にもっと違う何かを与えてあげたかったと思うのも嘘ではないけれど、二人きりで永久に過ごしていけるという魅力の前に適うものはなかったから。
感謝なんて、必要ないのだよ。
寧ろ謝りたいくらいなのだから。
だから、時折胸の奥がちくりと痛む。
君が私を呼び、求め、感謝の意を向ける、その時に。
ほんの少し後悔してしまうんだよ。
それでも君がそれで良いと言ってくれるその言葉に、私は甘える。
優しい優しい、私の子に。
本当に我侭な親だね、私は。
「……黒鷹?」
何かを確認するかのように呼びかける声に振り向く。
「ん? どうしたね?」
密かに考えていたことは表に出さずに、ただ笑いかける。
「……いや、たいしたことじゃないけど……その……」
微かに目許を染めて、言いよどむ。
とうに数え切れないほど触れ合ってるのに。
何時まで経っても、そんな誘い方をするのが可愛くて、玄冬の頬に手を添えた。
「いいよ。抱き合おうか、いつものように」
「…………ん……」
そうして、今日も互いを求め合う。
心に秘めた後悔に鍵をかけて。
永遠の時間、君と共にいられれば私は満足だから。
2004/06/20 up
かつて運営していた『黒玄Webring』で、
配布していたお題の「黒玄好きへの10のお題」よりNo5。
- 2013/10/06 (日) 02:43
- 黒玄