作品
ゆきの灯り
汚いとは思わない。
だけど、これで世界が滅びるのかと思うと。
それは俺がいるからなのだと思うと、舞い降りる雪を眺めるたびに、胸が締めつけられた。
一面に広がる輝く雪原……美しいとは思えなかった。
思えたら、どんなによかっただろうかとは考えるけど。
――君を、死なせたくない
黒鷹がそう言ったときの目は優しかった。
記憶は戻ってはいないけれど、それでもわかる。
それが本当のことで、どれほど大事に思われてるのか。
――君が咎を背負おうとしているのなら、
そんなに殊勝なことは思っていない。
俺のせいだというのは本当だから。
――全部私に押し付けてしまうと良い。
どうして、そんなことが言えるんだろう。
言って貰える価値なんて俺にはないのに。
――これは、君の所為じゃないんだからね
本当に馬鹿だ。お前は。
押し付けてしまうと良いなんて言いながら、とうの昔に自分から背負ってくれている。
――「玄冬」は、君しか居ないんだよ
聞こえた気がした。
私にも君しか居ないのだと。
――私は何があっても最後まで君と共に居る
『仕事』だとか『義務』だとか。そういったものでなく。
――………………忘れていただろう?
そうだな、俺にもお前しかいない。
だから、望んでもいいというなら。
黒鷹の手を取って、身を預けた。
それがお前の望みでもあるのなら。
ただ、共にあろうと思う。
終焉を迎える白い世界に背を向けて。
2004/09/06 up
かつて運営していた『黒玄Webring』で、
配布していたお題の「黒玄好きへの10のお題」よりNo6。
どうやら、これがゆきの灯り話の初めてだった模様。
ループだけど、輪廻転生の中で色々盛り込める春告げの鳥と違って、ゆきの灯りやてのひらの先には、行き着いた先が停滞しちゃうので、話をどうにも作りにくい。
今再プレイしたら、また違うかもですが。
- 2013/10/06 (日) 02:46
- 黒玄