作品
星に願いを
「ひ~いらぎ飾ろう♪」
「ファララララ~ラランラ~ラ♪」
ちびたち二人が楽しそうに歌いながら、クリスマスツリーの飾り付けをしている。
二人の身長よりも少し高いそれが、どんどん色とりどりのオーナメントで飾られていく。
こういう明るい雰囲気が私は好きだ。
異国の宗教はどうでもよいが、楽しい気分になれる貴重な機会をわざわざ逃すことも無い。
ふと。二人が同じものを手に取り、ぴたりと歌がとまった。
手にしていたのは、ツリーの一番上に飾る星。
「……これは俺がやる」
「ずるいよ、たー。俺だってやりたい」
おや、珍しい。
めったに喧嘩もしない二人がどちらも譲ろうとしない。
まぁ、あの星はやっぱり特別なものとして映るのかな。……やれやれ。
ソファで読んでいた本を置いて、ちびたちのところに向かう。
「二人で飾ってみればいいじゃないか」
「くろたか」
「二人でってどうするのさ」
「ふふ。二人でそのまま星を持っていたまえ。
玄冬! 今、手が空くかい?」
「うん? どうした?」
台所に向かって呼びかけると玄冬が怪訝そうな顔でこちらに来た。
「すまないが、ちびを一人抱き上げてくれるかい? 二人で星を一番上に飾るから」
「ん? ……ああ、そういうことか」
「あ!」
「そっか! そうすればよかったんだ」
二人で手にした星をみて、すぐに意図を察したらしい。
「じゃあ……」
「せーの……っ」
掛け声をかけて、二人で一緒にちびたちを抱き上げて。
ちょうど良い場所でちびたちを促すと、二人の手にあった星はツリーの一番上に飾られた。
二人を床に下ろすと顔を見合わせて笑う。
うん、君たちはそうやって笑っているのが一番いい。
せっかくの楽しい日に、わざわざ諍いを起こすこともないからね。
「さて……ちょうどいい。夕食ももう少しで出来るから、飾り付けが終わったなら、手伝ってくれ」
「はーい」
「お手伝い、お手伝い~!」
「私は何かやることがあるかい?」
「いや、お前はいい。本読んで待ってろ。
どうせ、ちびたちの様子見てて、進んでないんだろう?」
「なんだ。ばれていたのかい」
「まぁな」
笑う玄冬に私も笑い返す。
お見通しだね。でもお互いさまか。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
「ああ、出来たら呼ぶから。もう少し待ってろ」
「はいはい」
――クリスマスの夜。星に願うは唯一つ。
――この優しい時間が何時までも続きますように。
――Merry X'Mas!
2005/02/16 up
↑多分、簡単に絵日記等で書いてたものを改めて上げた日付だと思われます。
あまり季節ネタは外して書いてなかったはずなので。
- 2008/01/01 (火) 00:10
- 年齢制限無