作品
幸か不幸か
「手を離してよ、くろたか。今日は俺とくろとが一緒に寝るんだから」
右腕にはちびたかが腕を絡めて。
「何をいうんだい。玄冬は私と一緒に寝るというのが決まっているんだよ。
横槍を入れないでくれたまえ、ちびたか」
左腕では黒鷹が腕を絡めている。
「なんだよ! だって、いっつもくろととくろたかは一緒に寝てるじゃないか!
たまには譲ってくれたっていいじゃない。俺だって一緒に寝たい!」
俺は物か。
「冗談も休み休み言いたまえ。たとえ君でもこれは譲らないよ」
こいつもまるで子どもみたいだ。
「くろと!」
「玄冬!」
両方から異口同音で名前が呼ばれる。
「ね、今日はどっちと」
「一緒に寝るんだね!?」
一つ溜息をつくと、両方の腕を振り払い、傍で様子を伺っていたちびくろの方に向き直る。
「ちびくろ。一緒に寝よう。来い」
「うん」
「えー!?」
「なんでそうなるんだい!!」
満面の笑みになったちびくろを抱き上げて、逆に不満たっぷりの表情になった黒鷹とちびたかに爽やかに言い放ってやる。
「たまにはお前達2人で眠って親睦を深めろ」
まったく。
取り合いをしてくれるというのは幸せなのか、そうでないのか。
……妙な気苦労が増えてしまっているのは確かだ。
***
「ちぇーっ、くろとと一緒に寝るつもりだったのに。
くろたか、もっとそっち行ってよ!」
「君は私をベッドから落とすつもりかい。やれやれ。
せっかくだから眠る前に玄冬の小さい頃の話でもしようかと思っていたのに」
「え!? 嘘! 聞きたい! 聞かせて!!
ねぇ、小さい時のくろとはどうだったの?
くろとやっぱり似てたの? それとも違ってた?」
「ふふ……そうだなぁ。似ていたようで違うかな。
そうそう。あの子が丁度君くらいの歳にね……」
***
「たーとくろたか大丈夫かなぁ……喧嘩しないで眠れるかな?」
「案外大丈夫だと思うぞ。
あいつら、変なところで意気投合することあるしな。
余計な心配はしなくて大丈夫だ。寝る前に何か話でもするか?」
「ん……とね、昔のくろたかとくろとの話聞きたい」
「今とあまり変わらないぞ?」
***
コンコン。
小さく控えめに扉を叩く音に、やはり小さく「開いてる」とだけ告げると、案の定、黒鷹が入ってきた。
「どうだい? そっちのちびももう寝たかい?」
「ついさっきな。そっちも寝たんだな」
「ふふ、色々話疲れて、喉が渇いたよ。
お茶を淹れてもらってもいいかい?」
「ああ、俺も色々話していたから、
飲みたいと思っていたところだ。今行く。
……何を話してた?」
「ちょっとした、昔話をね。君の方は?」
「似たようなものだ」
つい先ほどまでの話を思い出して。
ちびが寝てるのをいいことに、軽く黒鷹の肩に甘えるように頭を預けると、優しく撫でてくれた。
子どもの頃のように。
2005/07/29 up
ここでかつて配布していた
『玄冬好きさんへの10のお題』からNo7。
一日一黒玄でこなしたものの一つですが、数日後にその後も書いていたので、今回両方合わせました。
Wたかでの玄冬取り合いの図w
ちびと同レベルで玄冬を取り合う黒鷹が大人げないだけとかつっこんではいけませんw
- 2008/01/01 (火) 00:14
- 年齢制限無
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