作品
やさしいキスをして
[Kuroto's Side]
「くー……」
「すやー……」
ちびたちが二人揃って、
気持ちよさそうに眠っている。
「ふふ……子どもの寝顔は
天使のようだとはよく言ったものだね」
黒鷹がちびたちの額に口付けを落とす。
……その表情が凄く優しくて、
ほんの少しだけ、ちびたちが羨ましい。
つい、じっと様子を見詰めていたら
黒鷹が怪訝そうな顔でこちらを見た。
「……ん? どうしたね?」
「あ……いや、何でもない」
「……玄冬」
「うん? ……何……」
何だ、と言いかけた口が黒鷹の口で塞がれる。
……唇を割って入りこんでくるかと
思った舌は何もせず、
ただ優しく唇を合わせるだけで。
……柔らかい感覚が心地よかった。
ややあって、唇が離れて、
黒鷹が笑って額をこつんと合わせた。
「言っておくけどね。……君には
ちびたちの何倍どころでなく、
キスをしているんだから。
……そんな顔をするんじゃないよ」
「……っ……!?」
自分の顔が紅潮していくのがわかる。
……顔になんて出ていたのか。
「望むなら、何度だってしてあげるから。
……どこにキスしてあげようか?」
「……額がいい」
「いいよ。……じっとしておいで」
「ん……」
目を閉じて、額にされたキスは優しかった。
さっきといい、今といい。
俺が今、どうされたいかをわかってるんだな。
熱を籠めた激しいキスだって好きだけど、
時にはこうやって優しいキスも欲しい。
[Kurotaka's Side]
「くー……」
「すやー……」
ベッドの上。私と玄冬の横たわる間にちびたちが二人揃って、
気持ちよさそうに眠っている。あどけない表情がなんとも微笑ましい。
「ふふ……子どもの寝顔は天使のようだとはよく言ったものだね」
少し身体を起こし、誘われるように二人のちびたちの額に口付けを落とした。
眠っているところを起こさないように気をつけて。
そうしたら横から視線を感じて、見上げると玄冬が目に複雑そうな色を浮かべていた。
「……ん? どうしたね?」
「あ……いや、何でもない」
はっと気がついたように、軽く目を逸らす。……ああ、そうか。可愛いね、君は。
言ってくれればいいのに。まぁ、言わない辺りが玄冬らしいといえば、それまでなんだが。
「……玄冬」
「うん? ……何……」
言葉を言いかけた口に自分の唇を重ねる。他に何をするでも無い、ただ触れ合うだけのキス。
しばらくその優しい感触を味わって、きょとんとした様子の玄冬に笑った。
まったく。可愛いったらない。額をこつんと合わせて玄冬の目を覗き込む。
「言っておくけどね。……君にはちびたちの何倍どころでなく、
キスをしているんだから。……そんな顔をするんじゃないよ」
「……っ……!?」
ちびたちに嫉妬していた自覚もなかったらしい。たちまち真っ赤になって、
困ったように目が伏せられた。……わかるだろう? 君へのキスとちびたちへのキスが別物なことくらい。
「望むなら、何度だってしてあげるから。……どこにキスしてあげようか?」
「……額がいい」
「いいよ。……じっとしておいで」
「ん……」
目を閉じた玄冬の額にそっと口付けを落とす。和らいだ表情に私もつい笑みが零れた。
拗ねたり、羨んだりしなくたっていいんだよ。玄冬。
君が望むのなら、どんなキスでもしよう。繰り返し、何度でも、何処へでも。
愛しい君への最上のキスを。
2005/01/09&2005/03/28 up
【恋愛に関するいくつかのお題】で配布されている
「キスのお題」よりNo11を使って書いた話です。
玄冬視点は元々は一日一黒玄から、
黒鷹視点は黒玄メールマガジン(携帯版)第10回配信分。
- 2008/01/01 (火) 00:16
- 年齢制限無