作品
couleur
「ん? どうした? ちびたか」
ちびたかと2人で風呂に浸かっていると、ちびが俺の髪を引っ張ってきた。
「んー、俺も玄冬みたいな髪の色で、まっすぐな髪だったら良かったのになぁって。
癖付いてるから、朝とか凄いし、玄冬の髪の色綺麗だもん」
――俺、黒鷹みたいな髪が良かった。……同じ髪の色と目の色だったら良かったのに。
俺があいつにそう言ったのは何時だっただろうか。
懐かしくてつい笑いが零れた。
「俺はお前の髪の色、凄く好きだがな」
ちびたかの洗い立ての髪をくしゃりとかき混ぜる。
何時かの黒鷹も俺に告げた。
――私は君の髪と目の色が凄く好きなんだけどね。深い海の色。何よりも私が好きな色だよ。
「……違うだろ」
「うん?」
「俺の、じゃなくてくろたかと同じ髪の色だから好きなんだろ」
「…………いや、あの、な」
「いいよ、解ってるもん」
拗ねて横を向いたちびたかにどう言ったものだか。
しばし言葉に困ってしまった。
***
「……くくく。そうか、それであの子は風呂上りに機嫌が悪かったのか」
「笑い事じゃないぞ。おかげで寝るまで拗ねっぱなしだ」
子どもたちの寝た後、ソファで玄冬と2人で晩酌を楽しみながら聞いた話につい笑いが零れた。
――痛っ! なんだい、ちびたか。髪を引っ張るならもっとそっとやりたまえよ。
――知らない!!
本を読んでいたときに、いきなり髪を掴まれて文句を言ったら、そのまま去ってしまって。
あの時はなんだろうと思っていたけれども、やっと納得がいった。
嫉妬からの行動か、あれは。
「いや、しかしね……兄弟っていうのは似るものなのかね。
タイミングがいいというか、何と言うか」
「あ?」
「ふふ……君たちが風呂に入る前に、ちびくろと私が入っていただろう?その時にね……」
***
「うん? どうしたんだい?」
自分の髪を洗っていると、湯船に浸かっているちびくろからの視線を感じてそう問いかけた。
「あのね、俺、黒鷹の髪の色好き。光の加減でいろんな色に見えて、凄く綺麗だもの」
「そうかい、ありがとう。私も君の髪の色が凄く好きだよ」
深い海の色は私が一番好きな色。玄冬と同じ髪の色。
「ありがと! でも、くろたかが俺の髪の色が好きなのは、くろとと同じ色だから、だよね?」
「え、あ、その……うん、まぁそうなんだが……」
確かに間違いではない。が、無邪気に笑って言われた言葉に戸惑った。
***
「なるほど、な」
「ちびくろは拗ねなかったけどね。……そういえば、君も昔言ったよね、
私と同じ髪と目の色だったら良かったのにって」
「……覚えていたのか」
「そりゃあ、忘れないさ。なんでそんなことをと思ったからね。私はこの色が何よりも好きなのに」
「ん……」
黒鷹が俺の髪に指を絡ませて、顔を引き寄せ、唇を重ねてきた。
割り込んだ舌から、ほのかにアルコールの香りがする。
唇を離すとその香りはさらに広がった。
甘い誘惑するような香り。
アルコールには酔わないけど、別のものに酔いそうだ。
「俺のもっとも好きな色は2つあるんだ」
「……ほう?」
「お前の髪の色と、目の色。……今だって、時々お前と同じ髪と目の色にな……」
言いかけた言葉は唇に指を当てられて、留められる。
「そこまで。それ以上聞いたら、私は部屋まで待てなくなりそうだからね」
「……待たなくてもいい」
「……珍しいじゃないか。ここでこのまましてもいいと?」
熱を浮かべた真摯な眼差しの黄金色の瞳。
きっと俺の目も似たような感じで黒鷹を見ているのだろう。
「……酔っているんだということにしておけ」
俺が酔わないことは百も承知で黒鷹が頷く。
そっと胸元の釦が外された。
「なら、そうさせて貰おう。途中で止めても遅いからね」
「ああ。……耳、貸せ」
微笑って、耳を寄せてきた黒鷹にさっきの言葉の続きを言った。
***
今も昔も変わらず、お前の髪と目の色がたまらなく好きだ。
深い海の色ほど、愛しい色はない。
だから、触れさせてくれ。その色に。
2005/03/30 up
基本は玄冬視点。回想部分は黒鷹視点。
今更ですがバカップルなのはここのデフォルトですw
- 2008/01/01 (火) 00:18
- 年齢制限無