作品
食わず嫌い
「ちびたか! それ中の肉だけ食べてピーマンを残すな!」
「や! 美味しくないから、や!」
夕食に出したピーマンの肉詰めを、ちびたかは中の肉だけ食べて、外側をそのままにしてる。
野菜の中でも特にピーマンは苦手の部類に入るらしく、今までほとんど口にしたことはない。
「お前、まともに食べたこともないくせに!」
「まぁまぁ、玄冬。
そういうのは無理矢理食べさせても逆によくないというか……その、苦手意識を増大させるだけであってだね」
「お前もだ。都合のいいことをほざきながら、器用に肉だけ分けるな」
ちゃっかり、便乗しようとした黒鷹を睨みつけて。
それ以上余計なことをいうなと視線で訴えた。
「たー、ホントに美味しいよ?」
「それでもピーマンはやだ!」
「しょうがないなぁ……たー、ちょっとこっち向いて?」
「ん? ……んー!!」
「……っ……!?」
「え……あ……」
目の前で展開された光景に一瞬声に詰まった。
ちびくろが小さく切ったピーマンの肉詰めを口にしたかと思うと、ちびくろの方を向いた、ちびたかの顎を捉えて……口移しでそれを食わせた。
床に落ちたフォークの甲高い音は誰が発したものなのか。
「……ちび……くろ? 君は一体何を……」
「え? だってこの前、くろとがくろたかにこうやって食べさせてたでしょう?
だからこれなら食べるかなって。ね、たー、美味しいでしょ?」
「……見ていた……のか」
確かに数日前にやった覚えはある。
晩酌のつまみがてらに作った野菜のフライチップを拒んだ黒鷹が
「君が食べさせてくれるなら」とか言ったものだから、
ちびたちも寝ているし、とやった記憶が。
まさか起きていて、あれを見られていようとは。
「あ……美味しい、かも」
「ホント!? ほら、じゃ自分でも食べてみなよ、ね?」
「うん」
目の前の問題は解決したようだが、育て方は間違ってはいないだろうかと、ふと疑問に思ったある日の午後だった。
2005/06/25 up
「amourette@718」(お題配布終了)で配布されていた
「食に関する10のお題」よりNo7を使って書いた話。
子どもは想像以上に親のことをよく見ているというやつですねw
きっとこの日の夜には玄冬は「お前のせいで!」と黒鷹に向かって怒り、
「あの子の偏食は私の所為じゃないし、口移しをしたのも君じゃないか!」と黒鷹が応じる図が展開されるものと思われますw
黒玄による野菜チップ口移し、はこちら。
- 2008/01/01 (火) 00:29
- 年齢制限無
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