作品
愛しさの象徴-前編-
※すみません。後編ほとんど手付かずで放置状態でした。
余力出来れば書きたいですが、優先順位は低いですorz
「……っ……あ、黒た…………! うあ!」
突き上げた場所が余程感じたのか、玄冬が腕を首に回し、ぎゅっとしがみ付いて来る。
加減の無い力がそのまま余裕のなさを伝えてるようで、たまらなく愛しい。
「声。ちびたちに聞かせるつもりかい?」
「…………っ……じゃ……口塞げ…………ん!」
言われたとおりに、口付けで声を閉じ込めるように塞ぐ。
歯列を割った舌はあっという間に絡め取られ、互いの口の端から唾液が零れていく。
玄冬にしては珍しいほどに積極的だ。
今日は誘ったのも玄冬だった。
しかも、居間で。
ベッドまで待ちきれないというように、碌に服も脱がずに身体を繋げ、既に一度お互いに達している。
――や……ああっ!
――もう、かい? ……随分早いね。
――っ…………
――……それに、まだ物足りなさそうだ。
手で受け止めた玄冬の白濁を潤滑剤代わりに後ろに塗りこめる。
達した直後だからか、まだ触れてなかったはずの場所は難なく私の指を受け入れて。
甘えるように縋ってくるからたまらなくなった。
――もう挿れても大丈夫かい?
――ん……
そうして、入りこんだ玄冬の中はとても熱くて、私も人のことなど言えないような時間で達した。
さすがに一度達したから、先程よりは落ち着いてはいるけれど、それでも。
繋げた場所が動く都度に立てる水音、上がった体温を伝える僅かに露出された肌、切なくあげる甘い声。
潤んだ目は酷く扇情的で、私を煽り立てる。
興奮するなという方が無理だ。
「……っあ……ん」
「また、先が濡れてきたね」
「…………馬……鹿っ……言…………なっ……ん!」
唇が触れ合うような距離のままでそう囁く。
唇にかかる吐息が熱い。
身体の間にある玄冬自身を擦ってやると、中が細かい震えを伝えて、眦からぱたりと涙が落ちる。
快楽によってもたらされる反応。
随分と今日は敏感だ。
「気持ち、いいかい?」
「ん…………お前……は…………っ?」
「当たり前だろう? ……ほら、君のその言葉で……ね?」
「ひぁ…………!」
中に収めてる私がより容量を増したのを感じたんだろう。
首にしがみついた腕の力がまた大きくなる。
痛いほどだが、今はその痛みさえ快感に繋がる。
「……動けるかい?」
二人座りあって抱き合う形を取っている。
玄冬も動こうと思えばいくらでも動ける体勢だが、強すぎる快感で身動きがとれないらしい。
力なく振られた首。
乱れた髪をそっと撫で付ける。
「じゃあ……動いてあげるよ、ほら」
「んっ! ……あ! 黒……鷹……っ……く……ろた…………! ああ!」
「玄冬……っ」
無我夢中といった様子で抱きついてくるこの子が愛しくてたまらない。
衝動のままに突き上げを繰り返して、再び頂を目座す。
「黒……た……かっ…………も……」
「いい、よ……一緒に……っ……達ける…………からっ……」
「あうっ!」
「く…………!」
一層強く身体を抱いて、わかりきっている弱い部分を突き上げる。
玄冬が背を撓らせて達したのと、私が玄冬の中に熱を吐き出したのは同時だった。
少しの間お互いに何も言えず、ソファに背を預け、荒い呼吸を繰り返す。
僅かに身体を動かした時に、また水音がして無性におかしくなった。
「ふふ、中がどろどろだ」
潤滑剤がわりにした玄冬の精液と私の精液が交じり合って、中で私自身に絡み付いてくる。
「……こっちも凄いことになったな」
「ああ。すまないね、君を包んで汚さないようにする余裕がなかった」
玄冬も私もシャツを纏ったままだったから。
互いのシャツに玄冬の出した白濁が飛び散っている。
玄冬がそっと私のシャツを掴んで苦笑を零した。
「仕方ない。後で洗濯がちょっと面倒だけどな」
「こっちも後始末が大変そうだ」
繋がったままの場所に指を滑らせると、目元がほんのりと染まる。
「……お前がやる気か」
「いけないかい?」
「恥ずかしいし、お前がやると……後始末だけではすまない」
「今更だろうに」
抱き合うことも、後始末も今に始まったことじゃないというのに。
拗ねたように顔を背けた玄冬の額に口付けた。
「とりあえず湯を浴びに行こう。このままで朝は迎えられないだろう?」
「ん……」
困ったような顔をして、返事をする玄冬がどうしようもなく可愛かった。
***
――気持ち、いいかい?」
――ん…………お前……は…………っ?」
――当たり前だろう? ……ほら、君のその言葉で……ね?」
――ひぁ…………!」
扉の隙間から見えた光景。
いつもと違う二人の声。
くろたかとくろとが何をしてたかはよくわからない。でも。
きっとあれは見ちゃいけないものなんだな、と思った。
くろとは下に何も着てなかったし、くろたかは……くろとの、触ってて。
それに、あんな顔してるくろたかもくろとも見たことない。
何か……知らない人たちを見てるみたいにちょっと怖かった。
気付かれちゃいけないと、そっと扉の前を離れたけど、気付かれなかったかな。
なんか胸が苦しい。
明日、二人と普通に話せるかな。
忘れ、なきゃ。
忘れ……ないと。
布団を被って眠ろうとしたけど、目を閉じると二人の様子を思い出して中々眠れなかった。
***
「ちびくろ? どうしたね?」
朝食の時間。
どうにも食が進んでいないし、顔色が冴えないのが気にかかって。
声をかけたが、ちびくろは何でもないというようにふるふると首を振った。
「調子でも悪いのか? 熱は……なさそうだが」
玄冬がテーブル越しにちびくろの額に手を伸ばすと、びくりと身体が硬直した。
まるで怯えてるかのように。
「……ちびくろ?」
「……え、あ……ごめんなさい。……その……何か具合悪いから寝るね…………ごめん、なさい。ごちそうさま」
「くろっ!?」
「ちび!?」
そのまま席を立って、ちびくろが部屋を出る。
後を追おうとした玄冬とちびたかを制して、私が席を立った。
「私が行こう。君たちはそのまま食事を続けていなさい」
「でも」
「いいから。皆で行ったら、かえってあの子も困るだろう?」
起きた時から気になっていた。
あの子は今日、私と目を合わせようとしなかった。
いや、私だけでなく玄冬やちびたかにも。
何かあったんだと思うほかにない。
ちびたちの部屋に向かい、一応扉を叩く。
部屋の中からする物音と気配でいるのは確認できた。
「ちびくろ? 大丈夫かい? ……入るよ」
「…………」
返事はなかったけど、そのまま部屋に入る。二段ベッドの下でちびくろは布団を頭まで被って横になっていた。
ベッドにそっと腰掛けて、頭の辺りを撫でてやる。
「どうしたんだい? 何かあったかね? 本当は具合が悪いとか、そういうのじゃないんだろう?」
「……っ」
布団越しに身体の緊張した様子が伝わる。本当にどうしたというのか。
「……私にも話せないことかい?」
ちびくろは元々自分の言おうとする言葉を意識せずにひっこめてしまう癖がある。内向的とでも言うか。
促してやらないと中々自分の意見を言おうとしないことがある。
だから、気付いた時に私は何か言いたいことはないかい、と促してやってそれでちびは言葉を口にするのだけど。
どうも今日はそれさえ迷っているようだった。
しばらく経って、布団から顔の上だけ出したちびがこっそり伺うように尋ねた。
「……何を言っても、嫌いにならない?」
「おかしなことを言うね。
君やちびたか、玄冬を嫌いになれる方法があると思うのかい?」
おどけた調子で言ったけれど、ちびくろの不安そうな視線はそのままだった。
「……夕べ。くろたかとくろと、何してたの?」
「夕べ?」
「……喉が渇いたから、水を飲みに行こうとしたら……二人で居間で何かしてたでしょう?
……ごめんなさい、きっと見ちゃいけないんだろうと思ったから、言わないつもりだったんだけど。
何か、二人とも知らない人たちみたいで怖かったし」
しまったと思った。
昨夜のアレを見られていたのか。
……うかつにも全く気付いていなかった。
私が気付いていないくらいだ。
玄冬は確実に見られていたことは知らないだろう。
「君が謝ることじゃないよ。
……悪いのは私たちだ。すまないね、びっくりしただろう?」
「ん……」
「そうだな……何をしていたかは、後でちびたかにも……いや、玄冬も交えて皆で話したほうがいいな。
夜にでも皆で話をしよう。
君たちもそろそろ知っておいてもいいだろうからね」
時が来たな、と思った。
どの道いずれはちゃんと話すつもりだったし、誤魔化すつもりもない。
「……そうなの?」
「ああ。……大事なことだからね。これだけは言っておこう。
私たちは悪いことをしていた訳じゃない。
人前ですることでは確かにないけれども、ね。
……それは解ってくれるかい?」
ちびくろはしばらく何か考えていたようだけど、やがてこくりと頷いた。
「ん、良い子だ。……私や玄冬が怖いかい? 気持ち悪かったりとかは?」
嫌悪感を抱かせてなければいいのだけど。
辛くなってしまうのはこの子だろうから。
「夕べはちょっと……ううん、朝も少し怖かった。でも、今は……大丈夫」
「なら、よかった」
髪を軽く撫でるとやっとちびの目が和らいだ。
「じゃあ、もし食べれるようになったら後で食卓においで。
夕べ、あまり眠れなかったんだろう?
まずは少し眠りなさい。
話をするときにはちゃんと起こしてあげるから」
「うん……あ、くろたか」
「うん?」
立ち上がって部屋を出ようとすると、ちびたかが呼び止めた。
「くろとに朝ご飯残しちゃってごめんなさいって言っておいて」
「……わかったよ、おやすみ」
そんな優しいところはやっぱり玄冬に似ている。
それがなんだか微笑ましかった。
***
「黒鷹。……どうだった、ちびくろは?」
食卓に戻ったところ、食器を片付け始めている玄冬が私に気付いて開口一番にそう聞いてきた。
「うん、それなんだけどね。玄冬。
ちょっと話があるんだがいいかい?」
「構わないが……」
「何? 何の話? くろはー?」
ちびたかが玄冬の傍にひっついているところを、軽く頭をぽんと叩いた。
「ふふふ、大人の話というやつだ。
すまないが君は部屋に戻っていてくれないか」
「えー!」
「まぁまぁ。
夜には皆に話があるから、その時にはちゃんと改めて話してあげるから」
「じゃあ、今でも一緒じゃん」
「いや、皆揃っていた方がいいからね。
後でちびくろも一緒にいるときに話してあげるから、ね?」
「……うー、絶対後で話せよ!」
「ああ。あ、ちびくろが寝てるかも知れないから、部屋では静かにしていたまえ」
「はーい」
ごねるかと思いきや、素直にちびたかが自分の部屋に戻る。
やっぱりちびくろの様子が何だかんだで気になっていたんだろうな。
「話って?」
「ここではちょっと、ね。……部屋でしたいがいいかい?」
「……ああ」
表情が硬い。
多分、私の雰囲気から何か感じたものがあるんだろう。
部屋に促すと黙って後から着いて来た。
***
「見られた!?」
「ああ。うかつだったよ。……すまない、私も全く気付かなかった」
「……いや、夕べは……誘ったのは俺だ。俺が……」
「君だけの所為じゃない。
応じたのは私だし、これは私たち二人両方に責がある」
ベッドに二人で腰掛け、話始めると玄冬の表情が曇った。
そっと傍らにある頭を抱き寄せると、そのまま素直に身体を預けてきた。
「……どうしたらいい」
「さっき、ちびたかにも言った様に夜に皆を交えて話すさ。
ありのままをね」
「……だが」
「ある意味ではこれはいい機会だよ。
もうあの子たちだって知ってていい歳だ。
まぁ、君が話しにくいなら私が大体話すさ。
悪いことをしているわけではないのだから。……玄冬」
「うん?」
「……後悔してるかい? 私と……こうなったことを」
背に手が回され、強く抱きしめられた。
「……よかったと思うことならあっても、ただの一度だってそんな風に思ったことはない」
「有り難う」
きっと、君ならそう言ってくれると思っていた。
私の愛しい子。そして……。
「あの子たちも解ってくれるさ。……何しろ、私たちの子だからね」
血の繋がりはなくても、ずっと育ててきた大事な子どもたち。
あの子たちなら、戸惑いはしても受け入れてくれるだろう。
小さく頷いた玄冬を、私も強く抱きしめ返した。
- 2013/09/14 (土) 08:54
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