作品
六花~Ver.R
[Kuroto's Side]
白く、白く続いていく世界。
ただ、静かに埋められ、滅び逝く様を。
二人で塔の窓から眺めた。
「寒くはないかね?」
「平気だ」
「……頬が冷たいよ」
当たり前だろうと、返そうとして。
後ろから、抱きしめられた。
目に手を当てられ、何も見えなくなる。
「何のつも……」
「もう、何も考えなくていいんだよ」
「黒鷹」
ただ、しんしんと。
その音だけが耳に残る。
雪の降る音だけが、今の全てだった。
[Kurotaka's Side]
青灰色の空は優しい色だ。
静かにその中を舞う雪。
白く埋められていく世界は美しいと思う。
その様を玄冬と二人、塔の窓から眺める。
「寒くはないかね?」
「平気だ」
心なしかその声は硬い。
……今、君は何を思う?
こんなに傍にいるのに、どこか遠くにいるような君。
つい、触れて確かめる。ここに在ることを。
「……頬が冷たいよ」
凍りつかせてしまっただろうか。その心を。
優しい子。
もう何もかもいいんだよ。
君が心を痛めることは何もない。
後ろから、身体を抱きしめ。
手で玄冬の視界を覆った。
「何のつも……」
「もう、何も考えなくていいんだよ」
「黒鷹」
何も見なくていい。
君が選んだのは世界でなく、自分。そして私。
だから、もう他の事は何も考えずにじっとしておいで。
私も目を閉ざす。……ああ、悪くない。
雪の降る音と抱いた身体から伝わる鼓動。
それがもう、今の全てだよ。
2004/09/06&2005/02/10 up
かつて別HNで立ち上げていた超短文黒玄サイトに掲載分(玄冬視点)と、
黒玄メールマガジン携帯版第3回配信分(黒鷹視点)。
数少ない、ゆきの灯りED話。
- 2013/09/13 (金) 08:36
- 黒玄