作品
歪みと望み
――君の望みを知っているよ、優しい子。
――殺されることを望みつつ、生きることに執着も微かに持っていることを。
――ああ、私にも君を殺すことが出来たら。死を与えることが出来たのなら。
「……っ……や……苦し…………!」
ぎり、と首を絞めた手に力を篭めると、玄冬の口が空気を取り込もうと動く。
苦しい、痛い。
そんな感覚はあるというのに、それは死に直結しない。
……どれほど、いいだろう。
このまま。
「黒た…………っ……離……っ」
このまま、殺せてしまえたら。
この首はこのまま絞めれば折れそうなのに。
「……く……ろ…………っ」
殺すことさえできるのならば。あの桜色の子どもの目に触れさせることもなく、ずっと君と二人きりで在れるのに。
私は君に死だけは与えてやれない。
「っつ……あ! げほ……!! んっ…………!」
玄冬の首から手を離すと途端に咳き込み、繋がった箇所がより一層締まる。
そこをすかさず突き上げると、歓喜とも恐怖ともとれる悲鳴があがる。
確実なのは、その叫びが私によってもたらされたものだということ。
強い悦楽とそれによる得体の知れない感情に翻弄された瞳は濡れて、美しい。
私の愛しい子。
叶わぬ望みを抱いて、今日も私は君をこの腕の中に収める。
抱いた痕跡さえ残らぬ肌。
それでも、せめて一時、狂ったように求める。
「黒……鷹……っ」
呼ぶ名前と投げかけられた視線。
他のことなど考えずともいいよとだけ呟いて。
共に達しながら逝けたらと思いながら、口付けを交わし吐精した。
何もかも共有したなかで、逝けるのならどれほど幸せだろう。
逝けようはずもないのに、ね。
首筋の脈打つ部分に触れ、伝わる鼓動に目を閉じた。
2005/02/25 up
黒玄メールマガジン(携帯版)第4回配信分から。
とりあえず、微エロ判定でw
- 2013/09/13 (金) 08:39
- 黒玄