作品
その顔が好き
快楽の導きのままに、高みに上り詰めた瞬間の顔。
追い詰められて、開放して、熱を吐き出すその時が。
ひどく無防備でたまらなくなる。
君にそんな表情をさせているのは私なのだと。
朱にそまった頬、涙を浮かべた瞳、濡れた唇。
そして、擦れた声で私を呼ぶ。
何度でも見たくて、確認したくて。
ただ、愛しくてたまらないから、今日も想いのままに、私は君をこの腕に抱く。
***
最初の頃は、精一杯で気がつかなかった顔。
お前が俺の熱に溶け込んでくる、その瞬間が。
苦しそうなのに、どこか嬉しそうで胸が一杯になる。
それに気付いてしまってから、目が離せなくなった。
真剣な眼差し、汗を浮かべた肌、髪の匂い。
熱さを含んだ声が、俺を呼ぶ。
本当はいつでも感じていたい。その存在を。
だから、今日も触れる。
溶けて混ざり合うのはできなくても、全身で感じることはできるから。
***
「……君が最中にどんな顔をしているか、見せてあげたいと思う時があるよ」
常日頃のストイックな表情とはうって変わって、艶めく魅力的なその顔を。
「……お前だって、自分の顔がどんな風になってるか知らないくせに」
いつもは愉快そうな色を湛える表情がどんなに優しく、真剣に俺を見ているのかを。
「そうだな。お互い様というところかね?」
まだ少し赤みを差している玄冬の頬に触れる。
「そういうことにしておこう」
近づいてきた黒鷹の唇に請われるままに自分のものを重ねた。
きっと、あの顔は本人さえ知らないから、こんなにも愛しい。
今後もきっとお互いが知ってて、知らない公然の秘密。
世界で一番好きな顔。
2004/06/30 up
「惑楽」(お題配布終了)で配布されていた
「萌えフレーズ100題」よりNo43。
- 2013/10/09 (水) 01:02
- 黒玄