作品
まとわりつく過去
※時間軸は第07話と第08話の間になります。
「お前、随分触れ方が優しくなっていないか?」
黒鷹の腕の中に抱きすくめられながら、ずっと気になっていたことをふいに口にした。
昔の記憶も持っているけど、知る限りでは黒鷹は今までで一番優しく俺に触れていると思う。
子どもが出来てからはなおさらに。
まるで壊れ物を扱うように、大事にしてくれている。
くすぐったい思いと同時に時々戸惑う。
まるで過去の自分と区別されてるみたいで。
「触れ方、ねぇ。……優しくなっているとしたら、今の君が女の子で抱き心地が違うからかな」
「違う?」
「ああ、随分違うよ。
生まれたばかりの君を初めて抱き上げた時にも戸惑ったくらいだからね」
「俺は俺であることに違いはないぞ」
「わかっているよ。……気に障ったかい?」
「いや、そうじゃないんだ。
……どうも、今までと違う扱われ方をされてる気がして」
「変えてるつもりはないんだけどね」
黒鷹が苦笑して、そっと俺の膨らみかけた腹に手を伸ばす。
「でも、どうしてもここにもう一人いると思うと、優しくなってしまうのかも知れないな。
今までにはそんなことがなかったからね」
でも、今も昔も変わらずに好きだよ、と耳元で囁かれた言葉に、まぁいいかと思った。
昔と変わらずにいるつもりだけど、きっと自分も何かが変わってはいるんだろうから。
2005/07/16 up
一日一黒玄でやったKfir(閉鎖)で配布されていた
「”好きすぎる人”との10題」、No6でした。
- 2008/01/01 (火) 00:18
- 第一部:番外編
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