作品
猫かわいがり
「あー……」
「よしよし、パパのところにおいで桜璃」
桜璃がようやくはいはいをし始めてから、黒鷹は連日のように桜璃に自分のところに来させるように構っている。
その表情ときたら、緩みっぱなしで苦笑するほかない。
おそらく、自分も繰り返しそうやって育てられているんだろうとは思うけれども、少しだけ妬きたくなる。
俺だって桜璃は可愛いけれど。
「可愛くて仕方がないって感じだな」
桜璃を抱き上げた黒鷹についそう言ったら、一瞬だけきょとんとした顔になり、ついで笑う。
楽しそうに。
「当たり前じゃないか。可愛くて愛しくて仕方のない君との間の娘だよ?
そりゃ、可愛くて仕方がないさ」
「……っ」
「血を分けた娘に妬く君も可愛いね」
「……狡いぞ、そういう言い方」
「本当のことしか言ってないのだけどね」
わかっているんだ。俺だって。
黒鷹が桜璃を可愛がってるのと同じくらいかそれ以上に、俺に甘いことくらいは。
だから、無言で黒鷹と桜璃の頬に口付けた。
本当はわかっている、という言葉の代わりに。
2005/08/21 up
一日一黒玄でやった創作者さんに50未満のお題で配布されている
「溺愛10のお題」、No1でした。
第一部完結前に書いたせいか、書き手的には展開にちょっと違和感。
- 2008/02/01 (金) 01:13
- 第二部:番外編