作品
上目遣い
※第二部進んでないので、先行ネタバレになりますが、
それでも構わないと言う方だけお読み下さい。すみません。
「ね……どうしてもダメ?」
「う……」
上目遣いに伺ってくる桜璃にダメだと即答できずについ口ごもる。
月に数度、市場に買い物に来ることがあるが、桜璃が望むものを買い与えるのは、月に一度までと決めている。
何でもかんでも欲しいものを無節操に与えるのは、教育上どうかと黒鷹と相談した結果だ。
桜璃が今手にしている本はその鉄則から言えば、NO、だ。
今月分は既に前回市場に来た時に購入済なのだから。
だが。
桜璃は基本的には俺に似ているのだが、目だけは黒鷹に似ている所為だろうか。
どうもこの目に弱い。
――今夜もなのか?
――だって、抱きたいんだよ。……いけないかい?
そうやって伺ってくる黒鷹の目を思い出す。
俺はああやってねだってくるのに勝てた試しがない。
……そして、結局負ける。
「……来月分はなし、だからな」
「! ありがとう、ママ!」
一気に表情が明るくなって、抱きついてくる桜璃。
払っておいで、と桜璃に金を渡し、桜璃が支払いにいくや否や、黒鷹が苦笑しつつ呟く。
「君も甘いなぁ」
「……誰の所為だ」
八つ当たりの言葉なのもわかっているんだろう。
理不尽なそれに眉をひそめることもなく、もう一度、甘いね、と呟いた黒鷹は俺の頭を撫でた。
2005/08/28 up
一日一黒玄でやった創作者さんに50未満のお題で配布されている
「溺愛10のお題」、No2でした。
- 2008/02/01 (金) 01:17
- 第二部:番外編